高血圧Q&Aをキーワードから探す
高血圧の成因・病態
- A1.加齢と共に血圧が上がるのは生理的現象か
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質問内容
私は69歳の退職男性です。振り返ってみると40代50代と次第に血圧は上昇してきていました。退職時には140/90mmHg前後まで上昇していましたが、これからはストレスからも解放され、血圧は正常に戻ると期待していました。ところが60代が進むと血圧は上昇し、現在上の血圧は150mmHg台、時には160mmHgを越えます。昔の同僚などに言わせると、年と共に血圧が上がるのは当たり前で、何をお前は心配するのかと笑われました。年齢と共に血圧が上昇するのは誰にでもみられる正常の生理的現象でしょうか。
お答え
- 文明国では加齢と共に血圧は上昇します。我が国の2004年の統計資料によりますと、30代と70歳以上の収縮期血圧の差は男性で約20mmHg、女性で約25mmHgあります。しかし、このように加齢とともに上昇する血圧でも、脳卒中や心臓病の原因となります。69歳なら140/90mmHg以上で高血圧という病気になります。150mmHg以上で160mmHgを超えることがあるとすると、治療の必要があります。かかりつけの医師とよく相談してください。
- ブラジルのアマゾンジャングルに食塩無しで住んでいる人達は、生涯を通じて正常血圧のままで、加齢とともに血圧は上がりません。
- 彼らの食餌は無塩食の上にコレステロールや飽和脂肪酸が少なく、食べ過ぎによる肥満もみられません。そして日中は身体を動かす生活をしているからです。
- A2.高血圧は動脈、静脈いずれが高いのか
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質問内容
私は62歳の家庭の主婦です。近くの医院で高血圧の治療を受けています。最近両下肢の静脈瘤が目立つようになりました。また、長く立っていると下肢がむくみます。高血圧の治療を受けているのに、なぜ静脈瘤ができてきたり、下肢のむくみがでるのでしょうか。
お答え
- 高血圧といっているのは、動脈高血圧(arterial hypertension)のことです。すなわち、動脈の中の高血圧で, 静脈は関係ありません(ただし肺動脈高血圧は別です)。
- 静脈の圧は、通常動脈の圧よりずっと低く、動脈高血圧には影響されません。あなたの下肢の静脈瘤は高血圧が原因でできたものではありません。下肢のむくみは静脈瘤のためと思いますが、Ca拮抗薬という種類の降圧薬の副作用としてむくみが来る事もあるので、先生とよく相談して下さい。
- A3.高血圧はよくサイレントキラーと言われていますが、その理由は
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質問内容
私は35歳の男性で、某会社の工場で主に機械の整備などの仕事に従事しています。現在のところ定期健診で高血圧と言われたことはありませんが、両親とも高血圧で治療を受けていて元気に生活しています。自分もその内に高血圧になるのだろうかと思っていたところ、会社の診療所に「高血圧はサイレントキラー」と書かれたポスターが掲示してありました。なぜ高血圧がサイレントキラーと言われるのか理由を教えて下さい。そして、高血圧にならない注意点を具体的に教えて下さい。
お答え
サイレントキラーは静かなる殺人者、あるいは忍び寄る殺人者などと訳すことができます。高血圧は長期間放置しますと心臓や脳、腎臓に障害をきたし、最終的には心筋梗塞や脳卒中を起こします。かなりの期間は高血圧そのものによる症状は全くありません。したがってある日突然、このような発作を起こし最悪の場合は死亡に至ります。そのようなことからサイレントキラーとも呼ばれるわけです。高血圧にならない注意点ですが、若い頃からの生活習慣、たとえば減塩、肥満の予防(食べ過ぎに注意)、運動(よく歩く、できれば1日1万歩)、節酒、ストレスの解消、十分な睡眠などが大切です。血圧が高めの人は家庭血圧の測定により日頃から血圧に関心を持つこと、医師による定期的な診察をおすすめします。
- A4. 高血圧の種類
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質問内容
私は40歳のサラリーマンです。最近血圧が高くなり、病院で種々の検査をした結果、腎性高血圧といわれました。これは普通の高血圧と違うのでしょうか。
お答え
高血圧のうちおよそ90%は本態性高血圧で中年以降からゆっくりと血圧が上がります。原因は高食塩摂取や肥満、ストレスなど環境因子と体質(遺伝的素因)からなります。残りの10%が二次性高血圧といわれるもので、高血圧の原因が明らかで、原因に対する根本的な治療により血圧は低下します。腎性高血圧も二次性高血圧であり、腎炎やのう胞腎などにより血圧が上がります。蛋白尿・血尿や腎機能の低下を伴うことがあります。腎炎の治療や腎臓を保護する(減塩やたんぱく質摂取制限など)ことが必要です。蛋白尿がある場合は降圧薬もレニン―アンジオテンシン系阻害薬が中心となり、血圧の低下目標(降圧目標)も130/80 mmHg未満と厳しくなります。
また腎動脈が狭窄しても血圧が上がります、この場合は腎血管性高血圧とよんでいます。多くの場合、狭窄した腎動脈を拡張する処置により血圧は低下します。 - A5. 高血圧は遺伝するのか
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質問内容
わたしは42歳の中小企業の役員です。最近かかり付けの先生から、血圧が高く降圧薬を飲み始めた方が良いと言われました。私の祖父、父親はいずれも高血圧症でした。また兄も数年前から降圧薬を飲んでいます。高血圧症は遺伝するのでしょうか。
お答え
高血圧のうちおよそ90%占める本態性高血圧は複数の遺伝因子と環境因子が関与するもので糖尿病や脂質異常症などと同様、多因子疾患です。遺伝子が係る程度(寄与度)は30%から70%といわれています。日本人では特に食塩に対して血圧が上がりやすいタイプの遺伝子を持っている人が多いといわれています。いわゆる体質として遺伝しますので親族に高血圧の人がいるかたは高血圧にかかりやすいといえます。このような方はとくに減塩、肥満対策など生活習慣に気をつける必要が有ります。きわめてまれな疾患として単一遺伝子の異常によっておこる遺伝性高血圧がありますが、この場合は家族性発症がみられ、小児期から非常に高い血圧値を示します。 - ストレスと血圧
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質問内容
私は45歳のサラリーマンです。今年の春異動があり職場が変わりました。なかなか新しい職場になじめずストレスを感じているのですが、それと関係があるかどうかわかりませんがこれまで降圧薬を飲んで血圧はコントロールできていたのですが、最近はかなり血圧も高くなり、これまでの降圧薬では十分な降圧が得られなくなりました。ストレスで血圧は上がるのでしょうか。
お答え
ストレスとは「緊張をもたらす事柄や状況」のことであり、精神的ストレス(怒り、不安、驚きなど)や肉体的ストレス(力をこめる、外気温の急激な変化など)があります。
現代の日本はストレス社会と言い表されるほど、日常生活において精神的ストレスを感じる場面が多いことで知られています。
何らかのストレスがかかると、普段の血圧は正常でも、中には血圧が急激に正常値を超えて上がってしまう人がいます。特に仕事中に現れる高血圧は、「職場高血圧」という名前が付けられているほど代表的なものであり、肥満の人や、両親や兄弟などが高血圧であるという家族歴のある人に多いという傾向がみられます。
このようなストレスによる高血圧は、職場で血圧を測定したり、まる1日の血圧を測る24時間自由行動下血圧測定(ABPM)などで発見できます。
早朝などほかの時間帯でも血圧を測ってみて、かかりつけの医師に相談してみましょう。
安定した血圧コントロールのために、ストレスの発散方法を身につけ、ストレスと上手につきあっていきましょう。
高血圧の検査・診断
- B1.高血圧の治療の前に受ける検査
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質問内容
私は42歳の男性サラリーマンです。先日職場健診で高血圧を指摘されました。健診担当の医師から、ここ2,3年で血圧は上昇しており、本格的な高血圧の治療に入りたいと言われました。そのために、先ず検査をしますと言われ医師の勤務する病院での予約を致しました。なぜ高血圧の治療前に検査が必要ですか。
お答え
高血圧の治療の前に、高血圧の原因や重症度、臓器障害の程度、などを調べます。それらの結果次第で治療方針も違うからです。
- あなたの高血圧が治癒可能な二次性高血圧か否かを検査によって調べます。そのために聴・打診の他に血液や尿の検査が行われます。
- 高血圧は、脳血管、心臓、腎臓、太い動脈(例えば頸動脈)などを障害しますので、それらがどの程度進んでいるかを詳しく検査します。
- 高血圧以外に、心臓血管疾患に対する危険因子の有無を調べます。例えば、メタボリックシンドロームの有無、糖尿病の有無、脂質異常症の有無、現在のライフスタイルに関する詳しい聞き取り、血縁者に若い時の脳卒中や心臓病があるかどうかなどです。
- あなたの高血圧が医師の前での一時的な昇圧、すなわち「白衣高血圧」でないかどうかを調べます。
- B2.血圧の日内変動は高血圧患者にとって何を意味するのか
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質問内容
私は42歳の男性ですが、過去6,7年東南アジアで技術指導に当たってきました。今回は比較的長く休暇があり、血圧のことが気になっていましたので病院で詳しい検査を受けました。II度高血圧であると言われ、24時間血圧を測定したところ、普通夜間寝ている時には血圧は昼間より下がるそうですが、寝ている時も血圧は高いままの状態でした。以下の3点について分かりやすくお教え下さい。1)血圧の日内変動について、2)私のように夜間も血圧が下がらないのはなぜでしょうか。3)生活習慣の修正(努力はするが、外国での仕事上困難)と降圧薬療法により血圧を下げていれば、夜間下降するパターンに戻るのでしょうか。
お答え
42歳とのことですが、若い頃からきちっと24時間にわたり血圧をコントロールすることはとても大切なことです。血圧の日内変動に関するご質問ですが、
- 24時間にわたって1~2時間ごとに血圧を測定してみますと、一般的に血圧は昼間の覚醒時より夜間の就眠時は下がります。しかし、高血圧患者では逆に上がる人(夜間昇圧型,riser型)、変わらない人、(昼間と比べ10%未満、夜間非降圧型,non-dipper型)、下がる人(昼間の血圧の10%~20%、夜間降圧型,dipper 型)、下がりすぎる人(昼間の血圧の21%以上、夜間過降圧型,extreme-dipper 型)のようにいろいろなタイプが有ります。これらのうち、夜間昇圧型、非降圧型は脳卒中や心筋梗塞など心血管事故(イベント)のリスクが高いことが知られています。また夜間過降圧型も高齢者では無症候性脳梗塞が多いとする報告があります。
- 夜間に血圧が下がらない原因は必ずしも明らかではありませんが、腎臓からのナトリウム排泄障害や交感神経活性の亢進などが考えられます。
- 夜間高血圧をきちっとコントロールすることはとても大切です。減塩やストレスの軽減、十分な睡眠など生活習慣の改善と、降圧作用の長いお薬の使用、場合によってはそれを就眠前に服用するなど服用方法の工夫により夜間降圧型に戻すことは多くの場合可能です。
- B3.成人の血圧の分類について
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質問内容
私は61歳の家庭の主婦です。50歳頃から血圧が上がりだし、近くの診療所で診てもらっていました。しかし、60歳の誕生日を機会に大学病院の高血圧外来を受診しています。私の高血圧の程度はII度高血圧と言われ、現在降圧薬を2種類内服して血圧はうまくコントロールできているようです。年を取ると次第に血圧は上がると聞いていますが、大人の血圧値の分類と高血圧の程度についてお教え下さい。
お答え
血圧は心臓病(心不全や心筋梗塞など)、脳卒中、腎臓病の原因となりこれらの疾患の危険因子です。血圧は高くなるに従いこれら合併症のリスク度が上がります。疫学調査の結果、140/90mmHgぐらいから、明らかに危険度が増します。したがって140/90mmHg(どちらか一方または両方が高ければ)以上を高血圧と定義しています。理想は120/80mmHg未満の至適血圧で、正常血圧の中でも高めの方では合併症の可能性は高くなります、130/85mmHg以上(140/90mmHg未満)は正常高値血圧とされ、注意が必要です。高血圧をさらに3段階に分類し,140~159/90~99mmHg(I度高血圧)、160~179/100~109mmHg(II度高血圧)、180~/110~mmHg(III度高血圧)と分類し血圧が高くなるほど重症となります。 - B4.家庭血圧測定の注意点と家庭血圧の高血圧基準
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質問内容
私は70歳の女性ですが、すでに10年以上近所の診療所で高血圧の治療を受けています。先月懸賞が当たり手首で測る血圧計をもらいました。そのことを先生に話しましたら、1日2回朝と晩に血圧を測って記録を受診の時持ってきてくださいと言われました。家庭で血圧を測る際の注意点は聞きましたが、もう一度詳しく注意点をお聞きし、コピーをして壁に貼っておきたいと思います。家庭血圧測定時の注意点と家庭血圧値の方が先生が測る血圧値よりだいぶ低いので、家庭で測った高血圧基準値を教えて下さい。お願いします。
お答え
- 原則として朝(起床後一時間以内、排尿後、朝食前,出きれば椅子にすわって1~2分安静後、脚は組まない状態)と晩(夕食前或いは就寝前と決めた時間に測定する、入浴後や飲酒後は一時的に血圧が下がりますので避けること)の2回測定する。1機会に2回測定し、その平均値をその時の値とします。ただし測定値は全て記録して主治医にみていただくこと。
- マンシェット(上腕に巻くゴム嚢)や手首の場合は血圧計が心臓と同じ高さになるようにすること。
- 測定期間はできるだけ長期間が望ましいです。普通1週間の平均値(朝および晩、別々に計算します)を診断にもちいます。
このようにして求められた家庭血圧の値は、外来よりも一般に低めです。家庭血圧の基準値は135/85mmHg以上を高血圧としています。外来診察室の血圧が140/90mmHg未満でも家庭血圧が135/85mmHg以上の場合は仮面高血圧と呼ばれ、きちっとした管理が必要となります。
- B5.正常血圧の基準値
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質問内容
2014年4月、「日本人間ドック学会と健康保険組合連合会(健保連)の調査研究小委員会は、健康診断での新しい正常血圧の基準値として収縮期血圧は147mmHgまで、拡張期血圧は94mmHgまでとした。」との報道がありました。今まで140/90mmHg以上が高血圧とうかがっていましたがどちらが正しいのでしょうか。
お答え
日本だけでなく世界的にも、高血圧の基準は140/90mmHg以上であり、収縮期、拡張期ともにその基準を下回っているときに正常域としています。さらに正常域の中に至適、正常、正常高値の3つの分類があります。至適血圧を超えて血圧が高くなるほど脳卒中や心筋梗塞などの心血管病が発症しやすいことが知られています。また、高血圧を治療することによって心血管病の発症が減ることも確認されています。
日本高血圧学会の血圧分類
(世界共通の血圧分類)収縮期血圧
(mmHg)拡張期血圧
(mmHg)正常域血圧 至適血圧 <120 かつ <80 正常血圧 120-129 かつ/または 80-84 正常高値血圧 130-139 かつ/または 85-89 高血圧 Ⅰ度高血圧 140-159 かつ/または 90-99 Ⅱ度高血圧 160-179 かつ/または 100-109 Ⅲ度高血圧 ≧180 かつ/または ≧110 (孤立性)収縮期高血圧 ≧140 かつ <90 今回の日本人間ドック学会と健保連による「正常」の基準値は、健康と思われる人の検査値をもとにその95%の人の検査値の範囲を示したものです。すなわち、100人の健康な人のうち95人の人の値はこの基準値の範囲にありましたというものです。将来の心血管病を発症する危険性がどの程度とか、治療薬を飲む必要性があるかどうかなどを検討して出された値ではありません。人間ドック学会と健保連は、報道がなされた後に、「今後数年間さらにデータ追跡調査をして結論を出していく」、「今すぐ学会判定基準を変更するものではない」という声明を出されています。
以上のように、診断や治療の観点から高血圧の基準は140/90mmHg以上であることに変わりはありません。 - B6.白衣高血圧・仮面高血圧
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質問内容
私は50歳のサラリーマンですが、先日かかり付けの先生からあなたは白衣高血圧ですから今のところはそう心配する必要はありませんと言われました。放置しておいてよいのでしょうか。また仮面高血圧というものもあると聞きました。これらはどのような高血圧でしょうか。
お答え
医師は普通白衣を着けて診察します。診察室で医師によって測定された時に高血圧となる場合を白衣高血圧といいます。病院によっては待合室に自動血圧計が置いてあり、呼ばれる前に自分で測定した血圧は高血圧ではないのに、医師の前に座ったとたんに高血圧になる場合などは典型的な白衣高血圧です。患者さんによっては診療所や病院などの玄関を入ったとたんに高血圧になる人もいます。今は白衣高血圧であっても将来高血圧になる場合もありますし、血管や心臓などに高血圧によると思われる軽度の障害が検査で認められる場合もありますので、ただちに治療を開始する必要はありませんが、半年あるいは1年毎の定期的な診察は必要です。さらに、定期的に自分でも家庭血圧を測定し、血圧が上昇してこないかをチェックしておくことが大切です。家庭血圧の平均が135/85mmHg両方、あるいはどちらか一方を常に超えるようになれば治療が必要となります。
またご質問の仮面高血圧とは、白衣高血圧とは逆に診察室の測定では高血圧ではなく職場や家庭での測定値が高血圧の場合で、高血圧が隠されているので仮面をかぶっているという意味で仮面高血圧と言います。降圧薬を内服していて診察室では高血圧でなくても夜や朝には薬の効果が消えて高血圧になる場合があります。ある研究によれば、降圧薬内服中の患者さんの10~30%は仮面高血圧であると報告されています。そして、仮面高血圧の患者さんは血圧が良好にコントロールされている患者さんに比較して約3倍脳卒中や心筋梗塞などが発症しています。仮面高血圧を見つけるには、家庭や職場(もし職場に診療室があれば看護師さんに測定してもらう)で自分で血圧を測定することが必要でしょう。 - 血圧測定が安静時である理由
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質問内容
血圧が上がると脳卒中などのリスクが高まるのはよくわかります。日中動き回っている時などには血圧が上がるので、むしろ動き回った直後に血圧を測る方がリスクを正しく測定できるように思えます。なぜ安静時に計測するのでしょうか。
お答え
高い血圧によって脳心血管病のリスクが上昇するのは、心臓や血管が高い血圧に長時間さらされた結果です。血管がストレスを受けている状況を代表する血圧値としては、安静時の血圧で評価する方が良いことが多くの研究で示されています。24時間の血圧を基にした研究でも、昼間の血圧よりも夜間の血圧の方が脳心血管病のリスクをより正確に反映することがわかっています。これが、安静時に血圧を測定する理由です。運動などによって上昇する血圧は、全身に血液を送り出すために必要な生理的な反応で、上昇している時間も短いので時間をかけて進行する動脈硬化への影響は小さく、上昇の程度も状況によって大きく異なるので診断には用いません。
高血圧の治療
- C1.収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高血圧の治療では重要か
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質問内容
私は52歳の家庭の主婦ですが、上の血圧が142位で、下の血圧が98位です。先生から高血圧と言われていますが、どちらの血圧を下げたらよいのでしょうか。上の血圧と下の血圧のどちらがより重要でしょうか。
お答え
- 上の血圧(収縮期血圧)は心臓が収縮して全身へ血液を送り出す圧です。一方、下の血圧(拡張期血圧)は収縮を終わり、次の収縮開始寸前までの間の圧です。
- 収縮期の血圧上昇の方が拡張期の血圧上昇よりも心臓・血管病の危険因子としては大きいことが判ってきました。しかしどちらの血圧も重要ですから、あなたの場合は拡張期圧血圧も下げるべきです。
- 逆に、収縮期血圧のみが高い高血圧を収縮期高血圧と言いますが、これは高齢者に見られる高血圧で、太い動脈の硬化による現象です。勿論、この場合も降圧療法は必要です。
- C2.微量アルブミン尿は改善するか
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質問内容
私は55歳のサラリーマンです。会社の検診で今回微量アルブミン尿を指摘されました。3年前にメタボリックシンドロームと診断されていました。
3年前の検診票を見ますと、ウエスト周囲径は91cm、トリグリセライドは174mg/dL、空腹時血糖は108mg/dL、血圧は138/88mmHgと記載されています。先生から生活習慣の是正を指摘され自分では頑張っているつもりです。現在血圧は144/86mmHgです。腎臓の障害をくい止めるためには降圧薬の内服が必須でしょうか。先生はそのように申しています。お答え
- メタボリックシンドロームがあり生活習慣の是正に努められたのに微量アルブミン尿(腎障害の始まり)が出始めた段階ですが、薬で24時間にわたり厳格に降圧すれば、その進行を阻止出来ます。
- 降圧薬はARB(またはACE阻害薬)が適当ですが、それでも不十分なら、Ca拮抗薬を追加します。
- 降圧の目標は130/80ミリ未満(家庭血圧の場合は125/75ミリ未満)です。
- C3. 降圧薬は一生飲み続けなければならないのか
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質問内容
私は56歳の会社員です。以前から健康診断で血圧が高めと指摘されていましたが薬はのんでいませんでした。先日の検査では168/94mmHgで、先生から降圧薬を飲んだほうが良いといわれました。友人からは一度降圧薬を飲むと一生飲み続けなければならないと聞いています。本当でしょうか。お答え
高血圧は生涯治療だといわれていますが、これは必ずしも生涯お薬を飲み続けることではありません。確かにそのように必要な方もおられますが、生活習慣の改善や定期的な血圧のチエックも含めて生涯治療が必要なわけで、たとえば、定年によりストレスが減って血圧が正常化する方もおられるし、減塩や減量、運動療法が成功し血圧が下がることもよくあります。このような場合は降圧薬は不要となります。また、夏期は血圧が正常になる人もおられます。大事なことは、家庭血圧の測定値、定期的な受診により、主治医の先生に降圧薬の減量や中止を決めていただくことです。中止したあとも定期的に経過を見ていただくことが大切で、もし血圧が再度上がるようでしたら、降圧薬を再開します。 - C4. 高血圧治療の最新情報
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質問内容
最近米国から厳格な降圧が良いとする研究結果が発表されたとのことですがどのようなものですか。
お答え
2015年9月11日に米国の健康に関する国立機関であるNational Institutes of Health (NIH)からSystolic Blood Pressure Intervention Trial (SPRINT) という名前の研究について予備解析結果が速報で発表されました。SPRINTは、50歳以上の高血圧の方で心臓病の発症危険度が高い方や75歳以上の方を対象にした研究です。研究目的は降圧目標を120mmHg未満とした群と140mmHg未満とした群で心血管病の発症などへの影響を比較することです。9361人の方が対象となり2018年12月までの研究予定でしたが、途中の解析で、120mmHg未満群の方が140mmHg未満群と比較して心血管病発症がほぼ3分の1減少、死亡がほぼ4分の1減少したという結果でした。その結果を受けて途中で研究を終了したとのことです。
日本のガイドラインでは一般の高血圧の降圧目標は140/90mmHg未満ですが糖尿病があれば130/80mmHg未満また75歳以上の高齢者では150/90mmHg未満(忍容性があれば最終的には140/90mmHg未満を目指す)というように、高血圧治療は降圧目標を含めて個人ごとに少しずつ方針が異なります。SPRINTの結果が今後のガイドライン改訂にどのように影響するかはさらに注意深い検討が必要と思われます。まずは、かかりつけ医のご指導のもと、現在の治療ガイドラインに基づいてより積極的に高血圧治療を続けられることが大切です。
その後、本試験の結果については2015年11月9日にNew England Journal of Medicine に論文が発表されています。
<追記>
この発表内容については高血圧学会から見解が出ております。下記のリンクからご覧いただけます。
http://www.jpnsh.jp/topics/475.html - C5.減塩の必要性
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質問内容
私は40代の主婦ですが、テレビや週刊誌で減塩の必要性がよくとりあげられ、減塩の料理本も多く出されています。今のところ我々夫婦は高血圧にはなっていませんが、今から減塩食を始めた方がよいのでしょうか。また減塩するとした場合、どれだけ厳密に守らなければならないのでしょうか。
お答え
日本人は世界的にみても食塩を多く摂っている国民で、この過剰な塩分摂取はおよそ4500万人の国民が罹患している我が国で最も多い疾患である高血圧の主な原因の一つです。そして高血圧は脳卒中、心臓病,腎臓病などの主たる基礎疾患です。食塩の摂り過ぎは高血圧ばかりでなく、直接脳卒中や心臓病、腎臓病などの原因にもなります。また最近では日本人に多い胃がんや骨粗鬆症などの原因にもなることも分かりました。従って減塩は最も安価な心臓血管病やその他の多くの疾患の予防法といえます。現在高血圧になっていない人達にも減塩は大切なことです。減塩を実行することは実際には容易ではありません。日本高血圧学会では、国民の高血圧予防や治療、さらに健康維持のために1日の食塩摂取量を6g未満とするよう推奨しています。
日本高血圧学会減塩委員会では、従来から義務化されていなかった食塩表示について、表示の義務化と「ナトリウム量」の表示を「食塩相当量」の表示に変更するよう、関係省庁(消費者庁、内閣府、厚生労働省)に要望書を提出していました。この結果、2015年4月から、「ナトリウム」は「食塩相当量」で表示されることになりました。(食品表示基準第三条第1項、下記URL参照)。経過措置期間後の2020年までに、新基準の栄養表示が見られることになります。私たちの取り組みが実を結び、国民レベルでの減塩推進に向けて一歩前進しました。 - C6.高齢者に好ましい降圧薬
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質問内容
私は農業をしている70歳の男性です。長いこと血圧を測定してもらいませんでしたが、先日地域の検診で血圧の上が184、下が74(mmHg)でした。
保健婦さんから治療を受けなさいといわれました。一応都会にいる息子に相談したところ、降圧薬にはいろいろあるから先生によく相談するように言われました。とりあえず私のような年寄りによく効く降圧薬を教えて下さい。お答え
血圧が繰り返し測定しても医療機関で140/90mmHg以上または家庭血圧で135/85mmHg以上あれば高血圧と診断されます。先ずは減塩を心がけることですが、それで降圧不十分なら薬を加えます。
降圧目標は65歳以上でも一般には140/90mmHg未満(家庭血圧135/85mmHg未満)です。ただし他に合併している病気があれば一律には出来ませんので、全身状態をよく診察して貰ってください。降圧薬の種類では、高齢者の場合、一般的にはCa拮抗薬か、又はアンジオテンシンのブロッカー(ARB、またはACE阻害薬)あるいは少量の利尿薬併用が勧められます。 高齢では、他の病気をも合併していることも多く、その内容によって降圧薬の使い分けが必要です。例えば、糖尿病や腎臓病があれば先ずARB(又はACE阻害薬)、狭心症があればCa拮抗薬を用います。数ヶ月間様子をみて、降圧不十分なら、2剤さらに3剤と組み合せて併用療法を行います。 - 減塩の必要性_2
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質問内容
私は高血圧で薬を飲んでいる40歳代のサラリーマンです。かかり付けの先生から塩分摂取を減らすように言われていますが、最近週刊誌で塩分を減らしても血圧は下がらない、アメリカでは高血圧
お答え
塩分摂取量が多いと血圧が上昇することは、これまでに国内外の研究から明らかにされています。たしかに減塩効果の大きい食塩感受性高血圧と、弱い非感受性高血圧がありますが、非感受性高血圧でも減塩による降圧効果が弱いだけで、血圧が上昇することはありません。
日本高血圧学会は、高血圧の生活習慣改善に食塩6g/日未満を推奨しています。食塩過剰摂取は高血圧以外にも、心不全、腎機能障害、腎がんの発症に関与する可能性も指摘されています。大事なことは、5~6gに塩分を制限しても身体にとってマイナスにはならないことです。イギリスでは現在、国をあげて減塩に取り組んでいます。WHOの目標量は食塩5g/日未満です。
日本高血圧学会では、週刊誌で引用されている文献を含めて、広汎に検討し、総合的かつ慎重に検討して減塩目標を推奨しています。2年前の日本人間ドッグ学会の血圧基準値の記事でも断片的に文献を用いて、多くの市民が混乱しました。惑わされることなく、主治医によく相談して高血圧の生活習慣改善対策を進めて下さい。 - 減塩の必要性_3
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質問内容
私は高血圧治療を受けている72歳の男ですが、週刊誌で高血圧のことがいろいろと書かれており、その中で「欧米では血圧の上は年齢プラス90までは健康と考えるのがスタンダードになっており、高齢者が140未満に下げる必要も効果もないとされている。」とありました。欧米の基準によると、私の血圧は162までならいいということで、薬をのんで下げる必要はないのでしょうか。
お答え
血圧値は健康を判断する基準ではありませんので「年齢よりいくつ以上の血圧までが健康」とするのは適切ではありません。「人は血管とともに老いる」と言われ、年齢が進むと動脈硬化は進み、上の血圧値は加齢とともに上がります。逆に、高い血圧が持続すると動脈硬化は進展し心血管病のリスクがより増加します。従って、基本的には高齢者でも血圧値は低いほど心血管病のリスクは低いと言えるのですが個人差はあります。
高血圧治療の目的は、高血圧の持続による心血管病の発症・進展・再発を抑制して死亡を減少させることです。この目的のために、過去の多くの疫学研究・臨床試験の結果をもとに、日本のガイドライン(JSH2014)では、目安として降圧目標値を示しています。高齢者の降圧目標値として前期高齢者では一般成人と同じ140/90 mmHg未満を目指します。後期高齢者ではまず150/90 mmHg未満を目指しますが、歴年齢では判断し切れない個人差が有りますので、より個別性を重視しつつ忍容性の有る場合に140/90 mmHg未満を目指すこととしています。近年、米国で行われた大規模臨床試験では、後期高齢者でも120 mmHg未満を目指すと、心血管イベントは抑制されることが示されています。しかし、この結果をすぐに日本に当てはめることは出来ません。現段階では、まずJSH2014の上記の降圧目標値を目指していただきたいと思います。大事なことは、機械的に「年齢よりいくつ上の血圧値」を目標とするのではなく、特に後期高齢者の方は、個々に達成し得る中でより低い血圧値を目指すことが心血管病のリスクの低減にとって重要ということです。 - 減塩の確認方法
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質問内容
私は現在70歳で年金生活をおくっていますが、診察時に何度も減塩の重要性を言われ、自分でも1日6gをめざし、出来るだけ塩分を取らないよう食事に気をつけています。今の食事でいいのかどうかわからないのですが、塩分摂取量はどうしたらわかるのでしょうか。
お答え
塩分は血圧と密接な関係があります。塩分を摂りすぎると体内の塩分と水分の量を調整するために血液量が増え、高血圧になるというわけです。そのため塩分摂取量を減らすことが重要ですが、そのためには自分がどれだけ食塩を摂取しているかを知ることが必要です。現代では外食や加工食品から摂る食塩が大きな割合を占めます。加工食品の成分表示に食塩を表示することは義務づけられていません。また、表示している場合でも多くはナトリウム(Na)と表示されています。ナトリウムの量と食塩の量が同じではありません。食塩の量はナトリウムの量に2.54をかけたものだということを知っておくと良いでしょう。
次にあなたが今どれくらいの塩分をとっているか調べる方法ですが、主治医の先生に塩分摂取量について検査をお願いしてください。1日の尿をためてNa量を測定する方法が正確ですが、1回の尿検査でNa量を調べればだいたいの塩分摂取量が分かります。 - 糖尿病と降圧薬
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質問内容
私は51歳のサラリーマンですが、デスクワークが多く最近太り気味です。数年前から高血圧のため降圧薬の投与を受けています。今回の検診時にあなたは糖尿病の予備群に入りましたねといわれました。先生から今内服しているレニン・アンジオテンシン系(RA系)抑制薬はあなたに最も適した降圧薬であると説明を受けました。RA系抑制薬はなぜ糖尿病予備群になった高血圧に有効であるのか教えて下さい。
お答え
糖尿病予備群とは、境界型糖尿病のことで、文字どおり糖尿病の一歩手前の 状態、血糖値が空腹時で110-125mg/dl、食後(又は糖糖負荷後)で140-199 mg/dlを言います。
それに高血圧が加わると、正常血圧の方に比べて約2倍糖尿病になりやすくなります。
降圧薬は主に5種類あり、その中で糖尿病予防効果が強いのはARB、又はACE阻害薬です。何れもアンジオテンシンという物質を抑えて、インスリンの作用を助ける(インスリン抵抗性改善)作用があるからです。糖尿病予備群の方の血圧管理に適しています。
しかし如何に良い薬でも、薬は所詮、対症療法に過ぎません。生活習慣で起こった病気の原因療法は生活習慣を直すことしか無く、薬以前に重要な事です。運動と食事で肥満を解消し、インスリン抵抗性を改善して、糖尿病や高血圧を予防してください。 - 点滴(輸液)による循環血液量の増加と血圧の関係
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質問内容
循環血液量が増えると血圧も上がるように説明を受けました。点滴(輸液)をした時も循環血液量が増加すると思いますが、その時に血圧が上昇して問題になることはないですか。
お答え
一般的に、血圧=循環血液量×末梢血管抵抗で表されます。健康な人では、循環血液量も末梢血管抵抗も色々な仕組みでうまくバランスが取れるように調整されています。循環血液が増えると腎臓から増えた分を出す仕組みもその一つです。通常の点滴で一時的に循環血液量が増加しても、高血圧に影響するような血圧上昇は生じない仕組みになっています。
高血圧の合併症
- D1.高血圧は認知症の原因となるか
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質問内容
私は54歳の男性で、中小企業の役員をしています。最近高血圧を指摘され、治療を受けています。高血圧は認知症やアルツハイマー病の原因になるのでしょうか。高血圧の治療を続けていれば大丈夫でしょうか。
お答え
- 高血圧を放置しておくと中年以降の日常生活動作は低下したり、脳血管性の認知症になります。しかし、高血圧がアルツハイマー病を発症させるという証拠はありません。
- 正常血圧の人でもアルツハイマー病になるし、高血圧があるアルツハイマー病の患者さんの血圧をコントロールしても、アルツハイマー病の症状が改善されることはありません。
- ただし、高血圧に基づく無症候性の脳血管障害(MRIで診断)では、時にアルツハイマー病に似た進行性の認知症になる事があります。
- 無症候性の脳血管障害の予防のためにも、必ず高血圧の治療は続けて受けましょう。
- D2.通風と降圧薬
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質問内容
私は52歳の男性教員です。父親の血を引いたようで、30歳の半ばごろから年に1回ぐらいの割りで痛風発作に悩まされていました。幸いザイロリックを内服することでここ10年間は痛風発作は出ていません。ところが、2,3年前から血圧も上がりだし、治療を受けようかどうか迷っているところです。血圧は今年の検診時152/90mmHgでした。降圧薬の中には痛風に悪い薬もあると聞いています。今後の治療方針についてご教示下さい。
お答え
- 高尿酸血症は痛風の原因になりますが、同時に動脈硬化を促進して、高血圧による心臓や血管や腎臓などの障害を促進させます。従って、生活習慣の是正と降圧薬によって、尿酸値と血圧を下げる必要があります。
- 生活習慣は減塩と運動が基本ですが、特に肥満者やメタボリックシンドロームの患者ではカロリー、プリン体の多い食事、ビールなどを制限します。
- 降圧薬の中では利尿薬(尿酸排泄を妨害)を避けて、ARB(またはACE阻害薬)や、Ca拮抗薬などを用います。
- 降圧目標は診察室で130/85ミリ未満、家庭血圧では125/80ミリ未満です。
- D3.喘息と降圧薬
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質問内容
私は64歳の家庭の主婦です。数年前から高血圧になり、Ca拮抗薬で治療を受けています。最近次第に血圧が上がってきていまして、朝測定する家庭血圧でも上が140mmHgをしばしば越えます。先生はもう1種類別の降圧薬を追加しなければならないと申しています。ところが、私には喘息がありまして、春とか秋には強い発作にみまわれることがあります。もし降圧薬を追加しなければならない場合、どのような降圧薬が喘息の悪化に関係しないのでしょうか。お教え下さい。
お答え
- 朝の家庭血圧がしばしば140mmHgを超えるなら、1~2週間の平均値を取って、それが135mmHg以上なら先ずは減塩と運動を強化する事です。ただし、運動によって喘息が誘発される場合もありますので、先生と相談の上で運動の強化を決めて下さい。
- それでも不十分なら降圧薬の強化が必要です。降圧薬の中でβ遮断薬(喘息を増悪させる)以外の薬、例えばARBか少量の利尿薬を追加すれば家庭血圧の平均値130mmHg未満に下げられます。
- D4.透析治療に入らないためには
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質問内容
私は68歳の無職の男性です。約20年来高血圧で治療を受けてきています。久し振りに腎臓の検査を受けましたところ、蛋白尿が1日0.4g、eGFRが46ml/分/1.73㎡と検査成績表に記載されていました。血圧は上が140mmHg前後、下80mmHg前後にコントロールされています。現在降圧薬はACE阻害薬、Ca拮抗薬と利尿薬半錠の投薬を受けています。このままで治療を続けていればよいのでしょうか。いずれ透析治療に入らざるをえないのか心配でなりません。
お答え
- 高血圧を20年間治療してこられたのに、それでも高血圧によって徐々に腎臓が傷んで腎硬化症が進行して来ている状態です。
- 腎機能(GFR値)は中等度の低下で、慢性腎臓病(CKD)第3期に相当します。
- 腎機能の更なる増悪阻止の為に更に厳格な24時間にわたる降圧が必要です。
- 降圧目標は診察室血圧値130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)です。腎機能を見ながらACE阻害薬をはじめとして降圧薬の増量が必要と考えられます。主治医とご相談ください。
- D5.高血圧による臓器障害
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質問内容
私は40歳の男性で銀行に勤めています。私の父は63歳の時脳卒中で倒れ、リハビリのかいもなく左半身に障害が残っています。父が言うには、高血圧を軽く見て治療もきちっと受けなかったので罰が当たったと嘆いています。最近私も血圧が上がり、I度高血圧だが他には異常がないので、先ず生活習慣の改善に努力することです、と先生から言われています。高血圧が持続するとどの臓器に障害が出てくるのでしょうか。そして、高血圧による臓器障害は血圧を下げていれば元に戻るのでしょうか。よろしくお教え下さい。
お答え
高血圧にはほとんど特別な自覚症状がありません。しかし、放っておくと次第に脳・心・腎などの血管が傷み、ある日突然、終点(エンドポイント)即ち、心臓病や脳卒中などという死の淵に到着して、初めて高血圧の恐ろしさに気付かされます。「高血圧は沈黙の暗殺者(サイレントキラー)」といわれる所以です。
- 心臓病:心臓を養っている血管(冠動脈)も高血圧によって動脈硬化が促されて細くなり、虚血性心疾患を来たします。即ち、狭心症(胸が締めつけられるなどの症状)や、心筋梗塞(冠動脈が詰まって起こる心臓の一部の壊死)です。又、心臓は高い圧に立ち向かって血液を送り出すために力まなければならないので次第に心肥大を来たし、終いにはばてて、心不全に陥り、胸が苦しくて夜眠れなくなったり、呼吸困難や浮腫が現れたりします。
- 脳卒中:脳の血管も高血圧によって動脈硬化が促進されて脆くなり、破裂したり(脳出血・クモ膜下出血)、詰ったり(脳梗塞)します。一命をとりとめても、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあります。
- 腎不全:高血圧は腎臓の細かい血管でも動脈硬化を促進し、腎臓の機能、即ち老廃物のろ過・排出に支障を来たします(腎不全)。最終的には尿毒症になり血液透析、あるいは腎移植が必要になります。
- そのほか:
大動脈:大動脈の内膜が引き裂かれて中膜が解離したり(解離性大動脈瘤)、或いは大動脈瘤破裂をおこします。
眼底動脈:しばしば眼底出血などを来たします。
これらの合併症は、食事・運動・降圧薬などで適正に降圧すれば予防出来ます。
- D6. メタボリックシンドロームの高血圧治療
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質問内容
私は55歳の自営業者です。先日の検診でメタボリックシンドロームと言われ、その時の血圧は168/96mmHgでした。メタボの場合、高血圧治療はどのようにしたらいいのでしょうか。
お答え
メタボの診断基準のうち血圧値は130mmHgまたは85mmHg以上となっていますが、質問者の場合はすでに血圧か高血圧の域にありますので、かなり高リスクの状態です。厳格な血圧管理が必要で糖尿病があれば130/80mmHg未満にする必要があります。降圧薬はARBやACE阻害薬のレニン―アンジオテンシン系阻害薬が中心となります。同時に減量、減塩、節酒、運動療法など生活習慣の改善が大切です。 - D7. 血圧を下げると認知症になるのか
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質問内容
72歳の父親のことですが、10年前くらいから高血圧の治療をしています。最近物忘れ等がひどくなり、認知症ではないかと心配しています。血圧を下げ過ぎると認知症が進むと聞いたことがありますが、このまま降圧薬を飲み続けて大丈夫でしょうか。
お答え
高血圧と認知症は高血圧学会においてもトピックスとなっています。まず中年期の高血圧は、高齢期における認知症発症の危険因子であり、若いころから生活習慣に気を付け高血圧の予防が大切です。一方、高齢期における認知症と血圧の関係は一定せず、高血圧のみならず、低血圧や起立性低血圧、血圧日内変動異常も認知症と関連するといわれています。
高齢者高血圧の降圧治療による認知症発症への影響についてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)やCa拮抗薬で発症抑制との報告がありますが、否定的な成績もありまだ結論は出ていません。高齢者の高血圧治療が認知機能を悪化させたという成績はなく、降圧療法は続けるべきです。物忘れがひどくなったと感じたことについては、一度物忘れ外来などで認知症の検査を受けてください。
その他
- E1.子供の高血圧
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質問内容
私はパートで働いている女性ですが、私の2番目の小学校6年の息子の血圧のことで相談します。先日の学校検診で血圧の上が142mmHg、下が88mmHgでした。肥満児は血圧が高いと聞いていますが、この子は特別肥満でもありません。学校からの連絡では総合病院で診察を受けるように言われました。小学6年生では普通血圧はどのくらいでしょうか。また、子供は病院へ行くのを大変嫌がっています。どうしたらよいのでしょうか。
お答え
- 血圧は学校検診では緊張のために高く出易いので、家庭血圧を朝と夜に測定してみて下さい。1~2週間の平均値が130/75mmHg未満でしたら心配はないと思います。
- 小学校高学年では収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧80mmHg以上が高血圧とされています。家庭血圧では130/75mmHg以上に相当します。これを常に超えている場合は腎臓などが原因となる二次性高血圧の可能性もありますので、専門の医療機関でみていただく必要があります。
- E2. 世界高血圧デー
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質問内容
私は65歳の年金生活者ですが、最近新聞で5月17日は世界高血圧デーであることを知りました。なぜ5月17日が世界高血圧デーになったのでしょうか。
日本でも何か行事があるのでしょうか。お答え
おっしゃるとおり全世界的に5月17日は高血圧の日と定められています。これは国際高血圧学会やWorld Hypertension League(WHL)(世界高血圧協会)で決められています。なぜ5月17日かという理由については不明です。日本高血圧協会もWHLに参加していますので5月17日には全国的に7から8か所の各都市で「健康寿命の延伸は高血圧管理から」のテーマのもと高血圧の予防と治療に関する市民講座を開催し啓発活動を行っています。 - E3. 妊婦・授乳中の高血圧治療
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質問内容
私は35歳の主婦で、仕事も一段落し、そろそろ子どもがほしいと考えています。以前お医者さんから血圧が高めであるといわれましたが、現在はくすりをのんでいません。高血圧の治療をする場合、妊娠していても降圧薬は飲んでもいいのでしょうか。妊娠と高血圧治療の関係を教えてください。また出産後の授乳中の薬の服用についても教えてください。
お答え
妊娠高血圧は妊娠20週以降に血圧が収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上になり、かつ分娩後12週までに正常になる場合とされています。蛋白尿を伴う場合は妊娠高血圧腎症と呼ばれます。このような場合は妊娠の継続を含め、産科医と内科の高血圧専門の先生との連携が必要です。妊娠時の高血圧の治療薬は20週までは安全性の面からメチルドパ ヒドララジン ラベタロール、20週以降はこれらに加えて長時間作用性ニフエジピンが推奨されています。妊娠の可能性がある場合は変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII拮抗薬(ARB)は使用しないことになっています。
また授乳中に服用が可能とされる高血圧治療薬はいくつかありますが、どの薬がいいかは、かかり付けの産婦人科、小児科の先生に相談してください。 - E4. 水銀血圧計
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質問内容
私は40歳のサラリーマンで現在高血圧症の治療中ですが、かかり付けの先生から、水銀血圧計は今後使用できなくなると聞きました。何か問題があったのでしょうか。
お答え
水銀の採掘や使用・廃棄の関する環境問題の高まりを受け、2013年に「水銀に関する水俣条約」が採択されました。本条約の発効に伴い2020年以降、水銀を使った機器の製造ならびに輸出入が原則として禁止されます。そのため医療現場で使われている「水銀血圧計」も、2020年以降は原則として製造・輸出入が不可能となります。ただし水銀血圧計は通常の取り扱いではほとんど環境負荷なく高精度な血圧測定が可能です。したがって現在使用されている水銀血圧計を直ちに廃棄・交換する必要はありません。しかし水銀血圧計を継続使用する場合、水銀の蒸発や不純物の混入、部品の劣化などが生じる可能性がありますので定期的なメンテナンスを行うことが日本高血圧学会より推奨されています。
- E5.鍼治療で血圧が下がるか?
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質問内容
私は42歳のサラリーマンですが、最近社内健診で血圧がやや高めでありしばらく様子を見ましょうと言われました。最近友人から鍼治療で血圧が下がると聞きました。薬を飲まずに治るのならその方がいいのですが、本当に鍼で血圧は下がるのでしょうか。
お答え
鍼灸治療で血圧が下がるかとの質問ですが、高血圧群と正常血圧群の血圧に及ぼす影響を検討したデータがあります。ただし治療の目的は血圧を下げることではなく腰痛や関節痛などの治療であり全身調整を目的とした治療(随 証治療)でしたが、高血圧群においてのみ血圧が下がりました。一般に軽症高血圧患者では、適度の運動を行うとある程度血圧は下がりますが、この機序として血中カテコルアミンの減少、血中プロスタグランディンEやタウリンも有意に増加することが報告されており、これらが血圧の低下に関与していると考えられています。鍼灸治療による降圧効果も非薬物療法の運動療法と同様の作用機序が考えられますがまだ十分には明らかにされておりません。従来、人迎穴という頚動脈洞を刺激する鍼治療が行われたことがあり、一時的には血圧が下がるようです。現在、高血圧の治療目的で鍼治療をすることは行われていません。